中国2.0 スマホインパクト --書評-- 中国人はなぜ財布を持たないか
中国に対する印象がまた少し変わった一冊。
1970年頃日本人を「エコノミックアニマル」とラベル付して切り離した結果、自分が時代に置いてかれた欧米の人々と、今の日本人が重なる。
ほぼ中国を教科書でしかしらない自分としては、中国で仕事をする周りの知り合いから話を聞く程度だが、彼らですら中国に対する意見はばらつくという印象だった。
そんな自分が直近読んだ本がコレ。
チャイナハラスメント: 中国にむしられる日本企業 (新潮新書)
- 作者: 松原邦久
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2015/01/16
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (2件) を見る
コレから学んだ中国とは全く違う世界に感じた。
これらの違和感は、中国社会をサンプリングする断面(いつ、どこを)に由来すると思うが、
- 中国はアメリカのような多民族国家であり、
- 巨大国家が変化し続けている、
という点が大きいのだろう。
本書では、最近よく電子決済と自転車シェアリングの普及が取り上げられる中国のその背景には、
- 既存社会の機能不全
- 社会インフラとしてのスマホ普及
があるという。
1は、偽造紙幣の流通、取引相手の信用などがある。相手を信用できないというのは、文革とかで身内や知り合いですら告発しないと自分がやられる的な極限状態がつい最近あったのでなんとなく知っていた。
偽造紙幣の流通はここまでひどいと知らなかった。確かにいちいち現金決済の際、自分の名前を紙幣に書いてたら時間もったいないよね。
という、1の土壌ありきで、2007年ころからスマホが発売されるといろんな変化を社会にもたらした、という流れ。変化とはたとえば、
- SNSアクセスが容易になり、世界から中国がどうみられているかを客観視できるようになった。
- シャアリングエコノミーを活用したモノ不足の解消サービス。
- 口コミ形式の個人信用力評価システムの発達。
など。たしかに、1の土壌を理解するとこの変化が急激に普及したのも納得。
現在の若い層の変化の指摘も面白かった。
- (多くの日本人が中国人に抱くであろう)「我が強い、マナーが悪い、うそをつく」→「利他精神、モラル向上、信頼できる」の兆し。
- 草食系男子の増加。
- 高い不動産保有欲に対する不動産価格の上昇。
- 子育て環境の悪さ。コストをかけないとよい教育が施せない。
雑感として、中国の多様性と日本の報道チャネルの狭さは相性が悪いと感じた。
中国社会の多様性はアメリカ以上で良い面も悪い面も山ほどあるなか、日本のメディアが中国社会の悪い部分を切り取って報道することで、片寄った認識が日本社会に浸透している可能性がある。
メディアを信じて取り残されたらみじめなので、ダイナミックな変化を続ける世界で頼れるのは自分の感覚だけ、という話。
P.S. 中国の識字率って実際どれくらいなんでしょう?Wikiとかでは96%とか出てるが("国家機関からの資料"とある)、中国政府の統計は信用できないからな。。